渡辺浩二設計室 のブログ

〒684-0033 鳥取県境港市上道町3256上道ビル6号 TEL/FAX : 0859-42-5357
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真正面からまともに照りつける夏の太陽は、そのぶんだけ強烈に地表面を熱します。そこに触れた空気はあたためられて上昇し気圧を下げ、風を招きます。熱自体は放射を続けてそのまま大気圏外に放出されます。だから夜は涼しいのだそうです。

避暑のために高原に向かうときに浮かぶ定番の疑問、

「どうして太陽に近づいているのに、標高が上るほどに涼しくなるのだろう?」

は、

「夏の暑さは、そのほとんどが(太陽光を受けた)地表面であたためられた空気によるので、標高がある程度上がって空気が薄くなれば、そのぶん伝わる熱も薄く(涼しく)なるから」 が答えなのだそうです。
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日射を防いでも、完全に防ぎきれなかった熱は一定の割合で室内に入ってきます。
そこで今回は、その熱を速やかに外に出す方法をご紹介します。

・あたためられると上昇する空気の特性を知り、
・その特性を生かした窓の配置と間取りの工夫をおこなうと、

室内には熱はこもらずサラッとして、風速1メートルの風は肌に触れて熱を奪うことで体感温度を1℃下げる効果があるといわれますが、風向きによれば、場合によっては寒いほどになります。

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夏、室内の空気はあたためられて軽くなり、天井へ向かって上昇します。多くの場合、天井面から窓の上端のあいだには「下がり壁」が付いているので、上昇は天井に阻まれ、上昇するルートをさがして水平移動しようにも壁に阻まれて、熱を帯びた空気はそこに留まり続けます。

そうならないように、風の出口を前もって計画しておきます。具体的には壁の最も高い位置、天井に接するところには下がり壁はつくらずに、窓を設けます。逃げ場のない熱気に出口(窓)を与えてやると、ちょうど水を張ったバケツに穴をあけたように、熱を帯びた空気はたちまち外に流れ出ます。流れ出たら気圧が下がり、下部から空気を呼び込んでまた流れ出て、そこに気流を作り出します。

以前設計した住宅で、廊下の上部を吹き抜けにして高窓(下がり壁なし)を設け、明かり取りと排熱を兼ねたことがあるのですが、竣工後、梅雨時にお邪魔して廊下に立つと、湿気を帯びた空気が、汗ばんだ肌を通り抜けて、高窓に向かって流れてゆく様子がとてもよくわかりました。更に言えばこうした空気の特性は屋根裏や外壁の排熱にも応用されて、「通気工法」との名称で、今では木造住宅の一般的な工法になっています。
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日本列島において夏の風は南東から北西へ吹いて、冬はその逆で北西から南東へ吹く、というのが基本的な流れです。これは、夏はユーラシア大陸の地表面があたためられて空気が上昇し、低気圧となって太平洋からの風を呼び込み、冬はその逆に熱容量の大きな太平洋上の空気があたためられて大陸からの風を呼び込むからなのだそうです。

建築環境・省エネルギー機構の気象データによると、弊社のある境港の8月(7~22時)の最多の風向きは東北東で、お隣の米子市は北東、松江市では東で、平均風速は2~3メートルほどでした。たしかに境港の夏は、東からの風がきもちよく、冬は西風が厳しい印象です。

ただ厳密には風は、日ごと時間ごとに絶えず風向きと風速が変わります。その家が「よい風」を得るには、気象データに加えて周囲の建物の配置や実際に生活する時間帯の考慮が必要で、建物のほうにも風を招く工夫が必要です。
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建物の工夫といっても特別なことは必要ありません。季節や時間帯によって、よい風が通り抜けやすいように、南~北、東~西、下階~上階への通風経路をその建物のなかに確保しておけば十分です(とはいえこれはなかなか大変ですが)。排熱ができて上下の気流の道があれば、京都の町屋のように、建物自体が風を招きます。

この先、ひょっとしたら、人間が風をおこし雨を降らせることができる時代がやってくるのかもしれませんが、空気の流れにあわせた家づくりは、手間さえ惜しまなければ今日確実につくることができます。

次回からは、冬の室内環境について書きます。