渡辺浩二設計室 のブログ

〒684-0033 鳥取県境港市上道町3256上道ビル6号 TEL/FAX : 0859-42-5357
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ホームページ 「家づくりの流れ」  (Click!)  でも触れていますが、弊社は基本設計の最終工程で、計画案の模型をお作りしています。


打ち合わせを重ねた平面・立面図を立体におこして、


・敷地と建物のバランス
・室内と外観のボリューム
・室内への光の入りかた
・外部からの室内の見えかた


などについて、検討と確認の打ち合わせをおこなうのですが、今回は、先日クライアント様にお渡しした模型の、外観の一部をご紹介します。

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東側立面、この建物の正面です。


外部からの視線とアプローチ動線にかかる1階の窓は、ハイサイドライト (高窓) にして視線を逃がし、採光とプライバシー確保の両立をはかりました。高床の室内には、ポーチの階段を経由して入り、広くとった床下空間は、大容量の収納スペースです。腰高な外観とならないよう、切妻屋根は不等辺として南側の軒高を抑え、逆に、高さを稼いだ棟(屋根の頂、いちばん高いところ)周辺部分にはロフトを設けて、2階収納の要所となっています。

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基本設計の段階で質感のある立体 (=模型) をご覧いただいて、建物イメージの 「ベース」 をクライアント様と設計者が共有しておくことは、後に続く実施設計、そして実際の工事期間のあいだのブラッシュアップ、さらによい家への磨き上げのためにはとても重要で、大切な工程であると私は考えています。

松江市内の計画です。

境港は朝晩がめっきり寒くなって、とはいえまだ暖房のお世話になるほどでもなく、夕暮れ時にはひざ掛けと一緒にパソコンに向かっています。皆様お住いの地域はいかがでしょうか?


設計打ち合わせの際、寒い時期には暖房や断熱の話題が中心になり、夏は風通しについての所見を求められることが多いのですが、今回は、これからやってくる冬の寒さに備えた家づくりのポイントを整理しながら、それが夏の室内環境にどのような影響を与えるのか、以下の2点、


1:外部開口部 (窓) を併せた断熱性能について
2:室内の気流について


について考えてみます (追記:長くなったので、2回に分けてお送りします)。


1:外部開口部 (窓) を併せた断熱性能について


冬の朝、こっぽり包まった厚手の布団が快適なように、室内の熱を外に逃がさないことが、寒さに備えた家づくりの基本で、一定以上の断熱性能 (布団の厚み) と気密性(こっぽり包まる) が求められます。このときに意外と見落としがちなのですが、実は、壁に充填する断熱材の性能 (と施工レベル) と、ほぼ同等の影響を 「窓 (外部開口部) の仕様と面積」 がもたらします。


一般的な2階建ての住宅の窓の総面積は、弊社設計の場合、外壁の総面積のおよそ10%程度です。対して、


・外壁 (断熱材を充填)
・窓(ペアガラスの窓面)


の、断熱性能 (熱抵抗値) を比べると、窓は、断熱材の10倍の熱を通します (窓が単板ガラスの場合は、約20倍) 。


つまり、建物全体でみると、窓からは、そのほかの外壁面と 「少なくともほぼ同じくらいの熱移動」 がおこなわれていることになります (10%の面積*10(20)倍の熱移動なので)。


全館暖房の熱源の、能力計算の際には、これらと計画換気による熱損失を加味した検討を要するのですが、いずれにせよ外部開口部 (窓) の仕様と面積は、イメージ以上に寒さ対策への影響は大きく、計画時点で十分に注意しなければなりません。


夏の、建物の暑さ対策は、


・太陽の直射熱をできるだけ室内にとりこまない


ことが、計画の基本 (のひとつ) です。


窓のない外壁面と屋根面への直射日光の熱を取り込まない (遮る) 手法については、ベランダに干した布団が夏、ちょうどよい日除けになることがあるように、外壁と屋根の断熱性能を高めることが、実践としては最も有効です。一方、窓については、


・日差しが 「横殴り」 に差し込む東面と西面には、できるだけ大きな窓は設けない
・夏の日射量が最大になる屋根面には、むやみに天窓 (トップライト) は設けない


ことが 「肝」 で、冬と夏の家づくりの断熱性能に関して、開口部 (窓) への配慮が、隠れた重要ポイントとなります。そして、冬と夏への対策の比較で 「あちらを立てるとこちらが立たない」 といったいわゆるトレードオフの関係は、断熱に関してはどうやら成り立たないようです。


2つめの項目の 「室内の気流について」 は、次回書きます (来週の金曜日に更新予定です)。


※このほかの室内温熱環境の計画について、もうすこし詳しい内容についてはこちら (Click!) に記しています。もしよろしければ、ご参照ください。 

前回  (Click!)  の続き、後編です。


2:室内の気流について


室内の空気が動くこと、あるいは動かないことが、冬 (夏) の室内環境にどのような影響を及ぼすのか、考えてみます。


冬でも夏でも、空気は、暖められると軽くなって上昇します。冬場、暖房により暖められた室内の空気も、天井に向かって上昇します。一般的な2.4m程度の天井高でかつ、所定値以上の断熱計画が施された室内空間は、何がしかの対策が必要な程ではありませんが、大きな吹き抜けなどを計画する場合には、上昇した空気を床付近に循環させる対策 (私は、床下に通じるファンを設置して、 「空気式の床暖房」 を兼ねた設計とすることが多いです) が必要です。


加えて、長期間にわたる材料の経年変化を考慮した、断熱性能を損なわない設計と計画を、どのようにアプローチして組み立ててゆくかは、その設計者の個性が現れるところでもあります。


夏には、


・室内の熱気は、速やかに外に吐き出す


ことが計画の基本です。夏の空気もやはり、暖められると軽くなって上昇します。


上昇した空気は、その勢いのままに、外に出ていってもらうとよいのですが、多くの場合、天井面まで上昇した熱気は、それ以上は上昇できず (天井があるので) 、水平移動をしようにも、天井と窓の上端のあいだにある壁に阻まれ、熱を帯びたまま留まり続けます (伝統的な和室の続き間に設える 「欄間」 のもともとの役割は、この熱気の水平移動を妨げないことであったようです)。


ならば、熱気が留まらないように 「出口」 を前もって計画しておくのですが、建物の最も高い位置、天井に接して設ける窓が、その役割を担います。以前設計した住宅で、廊下の上部を吹き抜けにして高窓を設け、明かり取りと排熱を兼ねたのですが、竣工後、梅雨時にお邪魔した際に廊下に立つと、湿気を帯びた空気が、汗ばんだ肌を通り抜けて高窓に向かい流れてゆくのがとてもよくわかりました。


流れ出た熱気は、出たぶんだけ室内の気温と気圧を下げ、そこにあたらしい気流を生み、ちょうど京都の町屋のように、家自身が風をつくり、呼び込みます。 (冬のところで書いたように) 床下への空気の循環の手法ができたことによって、室内の気流についても 「こちらを立てればあちらが立たない」 といったいわゆるトレードオフの関係は、どうやら見当たらないように思います。


あたたかい空気が上昇する特性を活かした家づくりについて、加えて言えば、この特性は、屋根裏や外壁の排熱にも応用されて、「通気工法」の名称で、現在の木造住宅では、スタンダードな工法として定着しています。


以上、大きく2つの項目に絞って、これからやってくる寒さに対する家づくりのポイントと、それが夏の室内環境にどのように作用するかを考え、整理してみました。このほか、快適な室内温熱環境づくりの要点について、こちら  (Click!)  にまとめました。もしよろしければご参照ください。 
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建築家、永田昌民 (まさひと) さんへのインタビューと事例解説がまとめられた本です (聞き手である住宅ジャーナリストの杉本薫さんとの共著)。 いま手元にあるのは、2003年発行の二刷です。


言わずと知れた住宅設計の第一人者で、私などがとやかく言うことなど、おこがましいのを承知で書けば、本書にもあるような 「涼しさ、香り、新鮮な空気、季節を運ぶ風と、明暗の演出、あたたかさ、季節をもたらす光を取り込む」 家を数多く残されて (幸運にも、そのうちの数件を拝見する機会に恵まれたのですが、本当に貴重な経験でした) 、家づくりを生業とする身にとっては、北極星のような存在の方です。


先日、ひさしぶりに読み返したのですが、 「大きな暮らしができる」 とは、もちろんその家の床面積の違いに依るものではなく (ゆえに小さいからよい、というわけでもなく) 、その暮らしのなかの 「一日の変化、四季の変化、経年の変化」 を踏まえた居心地のよさが、その家に備わっているかどうかなのですよワタナベ君、と諭された (というか説教された) かのような読後感で、引き続き精進いたしますと、空に向かって最敬礼するばかりでした・・・