渡辺浩二設計室 のブログ

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こうの史代さんの同名漫画を映画化したもので、米子市内の映画館でも上映されていると聞いて、先日行ってきました。


おそらく、各所で発信されているであろうことの焼き直しとなるのを承知で書けば、アニメーションの映画なのですが、70年前の暮らしと理不尽な力の行使 (暴力) が、絵空事でも他人事でもなく、いまの自分たちの生活と地続きであること、そこから皮膚感覚で伝わってくる恐怖 (音響効果と相まって、特に防空壕のシーンは、ほんとうに怖かった) 、そして、そのぶんだけなおさらに、頭にではなく骨身に染みてくるような日常の尊さが 「リアルに」 伝わってくる映画で、ツイッターなどで綴られている 「もう、とにかく観てください」 と、読みようによっては相当に乱暴な感想にも、そうとしか言いようがないのかもなあと、我が身にもある言葉にできなさ具合のもどかしさと一緒に、いちいち頷いています。


監督の片渕須直さんが言われているように、主人公の 「すずさん」 はあれから齢を重ねられて、きっと昨年はマツダスタジアムでお孫さん達と一緒に赤いメガホンを振り、大谷翔平を複雑な心境で見送って、そして今ごろは 「菊池の守備範囲はあれが普通」 「今年の堂林は一味違う」 などとおっしゃりながら、今シーズンの開幕をお待ちのはずです。


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先月、大阪出張の旅程を半日延ばして、大阪木材仲買会館 (2013年、設計施工 : 竹中工務店) の見学に行ってきました。完成時期でいえば、横浜市のサウスウッドを抜いて、この建物が国内初の大規模耐火木造建築物となるそうです (1階は、万一の水害を考慮してのRC造) 。


あらかじめこの建物の存在を知ったうえので訪問だったので、ああやっぱり写真よりも実物のほうがいいなあなどと、「割と普通な」 感想を持ちながらのファーストコンタクトだったのですが、よくよく考えてみると大阪市内の防火地域内に建つ 「木部あらわし」 の事務所建築物はやはり (良い意味での) 異質で、仮に、まったくの予備知識なしの状態で (例えば、近所にある市立図書館に寄ったついでに散歩したら、とか) たまたまこの建物の前を通りかかったとしたら、思わず足が止まり、うわ何これとしばらく凝視してしまいそうですが、実際にそういった様子の方は、少なからずいらっしゃるのだそうです (^^;


約束の時間となったところでアプローチを抜けて1階入口の扉を開け、先日見学のお願いを差し上げた者ですと告げ、名刺交換ののちに見学スタートとなりました。このあとに某行政ご一行の見学が控え、時間の限られたなかでしたが、ご厚意により、さまざまなところを見せていただきました。


そこで今回はその一部を 「おすそ分け」 します。
見学は、まずはエントランスホールのエレベーターから、3階に上がりました。



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3階大会議室です。


柱と梁は、表面の 「燃え代層」 、中間部分の 「燃え止まり層」 を備えたカラマツ集成材 (「燃エンウッドTM」) で、開口部はヒノキ集成材の木製建具が用いられています。机と椅子は、全体のデザインに併せてのオーダーメイドのようにも見えますが、どちらも既製品、とのことでした。



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大会議室の木製建具を開けた先は、そのままバルコニーに通じています。バルコニーは避難経路も兼ね、ここから東西2方向に設けられた階段を通って地上に避難することができます。3階バルコニーは2階バルコニーに架かる屋根を兼ね、同様に、2階バルコニーは1階外部の庇となって、風雨や日射から建物を守っています。その効果のほどを伺うと、竣工から5年目をむかえた現在も、ほぼノーメンテナンスで現状の外観を保たれているのだそうです。


バルコニーの段差部分に腰かけると正面に桜の木が見えるのですが、ここに座っての花見はさぞ心地いいだろうなあと、いろいろな質問に併せて、ここはお花見の時期に一般開放はされないのですかと尋ねてみたところ、残念ながら、それはなされていないそうです (建物の用途、性格上、無理もない話なのですが・・・)  。



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建物東側面と裏 (北) 面には、鉄筋コンクリートの防火壁兼耐力壁が立ち上がります。地上から見上げる2階バルコニーは高すぎず低すぎず、建物ファサードのバランスも考慮されたうえでのちょうどよい塩梅で、いわゆる 「ヒューマン・スケール」 でした。


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と、ひととおり拝見してエントランスに戻ったのですが、木、コンクリート、鉄のバランスが絶妙だなあと今、写真を整理しながら (そしてこの文章を書きながら) 、あらためて感じています。これから先、5年後10年後に、それら各素材が時間を蓄え、風合いを増した姿にもまた、再会してみたいです。



忙しいなか、館内の案内と解説に時間を取ってくださった大町様、本当にありがとうございました。この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。